2016.02.10 Wed

多文化共生のまちづくりに向けて、日本を学ぶ外国人を知る

2016年1月28日(木)TOKYO LOCAL THINKING vol.14は、「和食」「日本語」を通して、『日本を学ぶ外国人』を知る事で、日本の魅力を再確認したり、外国人を観光客と考えるだけではなく、街の住人としてまちづくりに参加してもらう方法など、多文化共生のまちづくりのヒントになる会を開催。

神田エリアにて、訪日外国人や在住外国人を対象に働くプロフェッショナルの方々をお招きして、今後の多文化のまちづくりについて会場の皆様と意見交換を実施しました。

一人目のゲストは日本を訪問中の外国人、在日外国人に和食を教えるスクールを運営するBuddha Bellies Cooking School Tokyo(料理教室)オーナーの秋山 亜裕子氏。

そして二人目は外国人の日本語学習者の経験、理解、そしてニーズに合わせた柔軟な日本語のレッスンを提供するCoto Language Academy(日本語学校)オーナー 渡部 由紀子氏。

なぜ外国人向けのビジネスをはじめようと思ったのか?、どこの国の方々からどんなニーズかあるのか?持続するための秘訣は?など、とても有意義な会となりました。

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【 ゲストによる自己紹介 】
Coto Language Academy(日本語学校)オーナー 渡部 由紀子(わたなべゆきこ)氏

2000年の飯田橋に開業し、2014年7月にリニューアルオープンをしました。現在は600~700人の学習者がいらしており、7割が欧米の方々です。就学ビザで来日する方向けではないスタイルが、他の日本語学校と異なる点です。そのため客層としては20代後半~40代が中心となっています。リラックスして楽しく学べることをコンセプトとし、学校というよりはラウンジスペースのような環境です。レッスンは実践的な内容が主で、8人までの少人数制で行っています。

Buddha Bellies Cooking School Tokyo(料理教室) オーナー 秋山 亜裕子(あきやまあゆこ)

訪日外国人向けの和食教室で「誰かのうちに遊びに来てそこで皆で料理をする」をコンセプトとしています。初めはお客さんは少なかったものの、一昨年は1300人、昨年は1500人と年々増え続けてきています。教室は少人数体制、一人一人のニーズを理解出来るようコミュニケーションを大切にしています。

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【 なぜそのビジネスをはじめたのか 】
※以下敬称略
渡部:高校時代にジャパンバッシングをメディアでよく目にするようになり、一人の日本人として何か出来ないかと考えるようになりました。それをきっかけに外国人と出来るだけ多く触れ合える仕事をしようと決めました。私という日本人を知ってもらうことでなにか少しでも変わるのではないかと思ったんです。

バンコクで一度1年半日本語教師として働きましたが、社会経験の無いことに危機感を感じ大手リクルートの営業職で3年働きました。28歳の頃にボランティアで外国人に日本語を教えている人に誘われ会社を退社しました。当時はアジアの方が多かったのですが、彼らは仕事場で日本語を使用できる機会に乏しく、その教室を求めて来ていました。その姿を目の当たりにして、やりがいを感じ起業を決意しました。

秋山:元々の職業は教員でして、現在も英語の講師として働いています。「英語はツールです」と自分の生徒に言っているにも関わらず、自分は英語を何かのために使えているだろうかという思いで、三年前に何かを始めようと考え始めました。以前より料理に関心があり、趣味としていくつかの料理教室に通ったり、料理関連の資格も取得していました。
また、学生時代からバックパックで他国の食文化を学んでいたことや、バンコクでクッキングスクールが増えてきているのを知り、今後増えていくだろう多文化交流において重要である「食」を新たな生業にしようと決めたんです。

 

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【 名前の由来は…? 】
渡部:最近は外国人向けのビジネスも多く、横文字の名前が複雑化して分かりにくくなっているという感覚がありました。そこでリニューアルに伴い、日本らしさを持ちつつ、親しみ易い名前に変更しようと思いました。悩んだ末、コミュニケーションのco、東京のto、言葉のcoto、モノコトを意味するcotoなど様々な意味合いを含む“coto”に決めました。

秋山:アメリカ東海岸に行くとBuddha Belliesという名前が良く使われているんです。仏様を意味することから国によってはあまり良いイメージを持たれないこともありますが、欧米人をターゲットとしていたことから、ヨーロッパや欧米、カリフォルニアなどの方々がより覚え易くてかわいらしいネーミングを選びました。「みんなでお腹いっぱいになる」という意味を込めて複数形のBelliesにしています。

【 場所選びの決め手になったこと 】
渡部:母体となっていたボランティア団体の拠点が飯田橋だったんです。5路線が走る飯田橋は他県からのアクセスもしやすいため、ターゲットの在日外国人が集まり易い場所であり、当時まだあまり日本語学校が無かったことも理由の一つでした。

秋山:始めの頃はいくつかのレンタルキッチンを借りていました。ある時、現在のテナントの元オーナーと知り合うことが出来て場借りをするようになったことがきっかけです。9割が観光客であることから、「見つけやすい、会い易い場所」であることが重要でした。迎えに行く手間を省けるよう、地下鉄すぐ側にあるこの場所は好条件でした。

【 どの国の方が多いのか 】
渡部:一番多いのはアメリカ人、次いでイギリス人、フランス人という順です。最近ではフランス人のニーズが延びてきています。上記3カ国で4割ほどを占め、残りの3割が他ヨーロッパ人、残り3割はアジアとその他の国の人々です。また、南米人の増加もみられます。元々居住者向けをターゲットにしていましたが、短期ビザやワーホリで仕事のために習得したいという方も増えてきています。受講生の国では日本より賃金が高い国が多いので、日本の治安のよさ、街の綺麗さなどから日本の環境を求め在住している人が多くを占めていると考えられます。

秋山:多い順からアメリカ人、オーストラリア人、イギリス人ですね。次いでその他のヨーロッパ諸国です。アジア人は少なく、月に1.2組ほどです。客層は季節によって変化が見られます。夏はアメリカのファミリー、冬はスキーしに来日しているオーストラリア人が目立ちます。花見のシーズンは人気で宿泊もハイクオリティーな期間ですが、その時期はスカンジナビアなど日本に来たほうが物価が安いとされる国の人からの需要があります。国別に比較して面白かったのは、フランス人の深堀りしていく性質が日本人と似ていたことです。路地歩きなどに美を見出す感覚はどこか近しいものを感じました。

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そして、ここからは会場からの質疑応答に移ります。

 

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【 どういうツールでプロモーションを行っているのか 】

渡部:webサイトやSEO戦略には力を入れていて、ジャパンタイムズやジャパンガイドドットコムなどを上手く利用しています。広告で7倍の効果がでています。webデザインの制作を外国人チームに任せたことで、問い合わせ件数は4倍にも跳ね上がりました。国の違いで感性や趣向が異なるのか、私の意見は採用してもらえず、ほぼほぼ外国人グループにお任せとなりました。ターゲットにはターゲットのことをよく理解したマーケティングがこれほど重要なのかと思い知らされましたね。あとはgoogle+で口コミが集まることで広告になっているのと、facebookは1日2回、twitterも行うなどSNSも駆使しています。

秋山:HPの立ち上げも、全て自分で出来るやり方を選びました。8人までの少人数の教室であることから、自分の目の行き届く人数の集客を、自分の管理できる範囲で行っています。後は、受講生によるトリップアドバイザーの口コミは大きな広告となっていると思います。

 

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【 継続するためのコツは 】
渡部:どの層のお客さんを幸せにしたいのか、ということをきちんと明確にすることが大切だと思います。「欧米から、留学以外の目的で来日し、今後も日本で生活したい人」というターゲットを絞った教材、サービス作りに力を入れてきました。結果、相応の方々からのニーズを得て来れています。誰に、何を発信するかを理解し実行していくことが重要だと思います。

秋山:食べ物が好きなお客様が大半を占めています。専門的にプロの技を見につけようとすると短時間ではやはりハードルが高い。2、3時間で誰もが作れて、満足感、達成感の得られるレシピ方法を追及しています。レッスン以外でも、例えばトリップアドバイザーにも載っていないおすすめの料理屋を紹介できるよう、それら情報網には常にアンテナを張っています。飲食店とお客さんを結べる立場として、信頼関係があるからこその関係性を作れるようにコミュニケーションを大切にしています。

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【まとめ】
渡部さんのwebデザインを外国人制作チームに任せた途端、問い合わせが4倍に伸びたという、デザインをコミュニケーションとする考え方は大変興味深かったです。異なるコミュニティー間で存在する感性の違いがマーケティングに実は大きく影響していることは、多文化共生において必要な視点であると思いました。
また、秋山さんの信頼関係が築けるからこそ、新たな関係性に発展できるという実体験から、異文化における一つのビジネスは一次的なものではなく、二次的三次的と連鎖していく可能性を秘めているように感じました。

文:共立女子大学 建築デザイン学科 4年 丸山飛鳥(EDITORY 神保町 学生アルバイト)

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