2016.06.06 Mon

地域の誰もが出演者、観客になる「音楽」のまちづくり 〜おとまち 音楽の街づくり事業を例に〜

2016年2月25日(木)の TOKYO LOCAL THINKING vol.15は、ヤマハミュージックジャパンが全国各地で行っている音楽による街づくり事業「おとまち」の佐藤雅樹さん、安間尚美さんをお招きして、持続的な地域コミュニティを音楽でどうデザインしていくか、今まで日本各地で実際に行ったイベントを事例に皆様と一緒に考えていきました。

三つの活動事例を紹介して頂きながら会場で意見交換、質疑応答まで大変有意義な会となりました。

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【「おとまち」の紹介 】
ヤマハミュージックジャパンの音楽の街づくり事業 ”おとまち” とは、ヤマハが125年以上の長きにわたって培ってきた音と音楽に関するノウハウを活かし、子どもから高齢者までの誰もが音楽を気軽に楽しめる環境を地域と共に創出、地域課題の一つであるコミュニティの再生なども視野に入れて展開している事業です。音楽が持つ「人と人をつなげる力」を使って、地域活性化に取り組む企業や自治体に対する音楽イベントのコンサルティング、地域の文化資源を活かした参加型のフェスティバルの企画など、多様な文化活動をプロデュースすることで地域の価値を高め、人や家族が交流する街づくりを目指しています。

【 事例1  MITOレディースビッグバンドbyエクセル 】
茨城県水戸を拠点にした、市民によるビッグバンドを地域で育てていくプロジェクトです。日常生活の中で何気なく通過してしまいがちな“駅”の都市における新しいあり方や、駅を中心としたさらなる活性化を検討したいという水戸ステーション開発株式会社様からの依頼でこのプロジェクトがスタート。元々この地域では吹奏楽が盛んであり、経験者が多いというリソースを生かして、女性によるビックバンドが誕生しました。ここであえて女性にフォーカスしたのは、ライフステージとともに生活スタイルが変わりがちな女性において、このビッグバンドが、妻でも母でもない新たなアイデンティティのニーズを解消するサードプレイスになりえるのでは、と考えたからです。

駅ビルのホールで月に1~2回日々練習をしながら、時には駅のコンコースでの公開練習や、ミニコンサートで演奏を披露したりしています。過程も含め地域の方々に見ていただくことで、演奏者・観客の壁を越えた一体感を得ることが出来ます。昨年3月「上野東京ライン」が開業し、東京駅に常磐線が乗り入れた際には、水戸のPR活動として東京駅での記念コンサートを開催しました。この取組も今年で3年目を迎え、今後の自立に向けたガイドラインの制定など、継続的なコミュニティ運営のサポートを加速しています。

【 フォレストシティビックバンド 】
千葉県新船橋駅にある1500戸のマンション群「フォレストシティ」に住む皆さんで構成されるビッグバンドです。今回は、三菱商事株式会社様と野村不動産株式会社様の「マンションそのものの価値を高めるような、音楽をツールにしたまちの新しいコミュニティを市民とともに作り上げていきたい」という想いからこのプロジェクトが立ち上がりました。
地元楽器店の協力も得て、小学生からお年寄りまで一緒に音楽を楽しめる新たなビッグバンドが誕生したことで、メンバー間での「醤油の貸し借り」が行われるなど、昔ながらのご近所付き合いの関係性が生まれていったという嬉しいエピソードがあります。他には、隣駅の音楽施設での練習に小さいお子さんのメンバーを送り出す際にも、同じマンションの仲間が一緒ならば親御さんも安心といった、地域コミュニティのあり方の新たな可能性を感じています。

渋谷

【 渋谷ズンチャカ! 】
渋谷区を拠点にした市民参加型の音楽祭です。渋谷の前区長から「ハードを作り終えてからソフトを考えるのではなく、同時に考え進めていきたい」とのご相談があり、2013年から企画プロデュースのサポートをしてきました。地元の商店会の皆様やNPO法人であるシブヤ大学と協働し「形が見えないと説得力に欠けてしまうから、まずはやってみよう」ということで、一昨年に第0回のスモールスタートを切って、昨年には第1回の「渋谷ズンチャカ!」を開催することが出来ました。20~30代の若いボランティアで構成される「チームズンチャカ!」が企画・運営し、約13の商店会から構成される実行委員会がその若者メンバーをサポートしているという体制が取られています。

第0回はみやしたこうえんのみでの開催でしたが、第1回では新たに駅の反対側に位置する桜ヶ丘を加えた2拠点を会場とし、その2点を音楽パレードで結びました。本年度では、センター街での開催実現にむけて、「チームズンチャカ!」と実行委員会が協力して準備に力を入れています。

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そして、ここからは会場からの質疑応答に移ります。

【日本の文化的な楽器や音楽に触れられる機会がまだ少ない点について】
市民の皆さんの音楽活動は今までホールの中で行われてきたと思いますが、おとまちとしては、より多くの方々が参加できる屋外が今後ポイントとなる、と捉えています。日本の文化的な楽器や音楽がこれまで野外で見られなかったことを理解しつつも、実行に繋げる策を練る必要がありますね。例えば、日本固有のリズムを奏でられるのは、日本の楽器だけとは限りません。ドラムサークルで用いられるパーカッションなど、海外の人にもなじみがあるような楽器を用いる事で、海外の人と一緒に演奏することが出来るのではないかと考えられます。また、観光客がよく集まるようなスポットや施設、意外なところではクルーズなどを舞台にすることで、より広がりを持つこともできそうですよね。

【観客には何を感じて欲しいのか】
こういった取り組みにおいてはやはり、その街に住んでいる人たちに応援したいと思ってもらえることが一番です。街に対して「自分ごと」の意識を持ってもらえるような共感が拡大していけば、街に愛される“自立したコミュニティ”として持続していくことが出来るのだと思います。また、他の地域の方には、その街を知るきっかけになってもらうことです。活動自体がその地域のPRとなり、他の地域に認知されていくことが理想です。

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【まとめ】
企業・自治体・市民が一体となりプロジェクトやコミュニティーを立ち上げることが後に、その地域の繋がり、その地域の魅力を高めていくことに繋がっていることがよく理解できました。
ヤマハ様がビジョンとして掲げていた3年で自立したものにするという、自分ごとにしていくための働きかけは、そのきっかけを作り得ることの出来る企業としての立ち位置を先立って示唆してくれているかのように感じました。

文:共立女子大学 建築デザイン学科 4年 丸山飛鳥(EDITORY 神保町 学生アルバイト)

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